多発性嚢胞腎
1. 多発性嚢胞腎とは
両側の腎臓にできた嚢胞という袋が徐々に大きくなり、正常組織を圧迫することによって腎臓の機能が低下する、最も頻度の高い遺伝性疾患です。約4000人に1人の割合で発症すると考えられています。
30-40歳代まではほとんど症状はありません。しかし体内では徐々に嚢胞が大きくなっており、腎機能が徐々に低下している事が多くみられます。60歳で約半数の方が透析が必要な状態まで腎機能が低下してしまうと言われています。
遺伝形式は常染色体優性遺伝が多く、両親に多発性嚢胞腎の方がいれば、男女を問わず2分の1の確率で多発性嚢胞腎が遺伝している可能性があります。ご両親が多発性嚢胞腎で治療されていたり、透析を受けている場合には医療機関での精査をお勧めしております。
2. 難病指定の疾患
2015年1月1日より難病に指定されております。
医療費助成を受けるためには、まずは難病指定医の診断を受ける必要があります。居住されている都道府県の保健所などで申請書を入手して記入し、いくつかの書類とともに保健所などに提出します。詳しくはお住いの保健所などでご相談下さい。
当院は難病指定医、および難病指定医療機関であり、診断、治療が可能ですので、ご相談ください。
3. 合併症
肝臓にも嚢胞ができることがあります。また嚢胞の感染や疼痛、腹部膨満感などの自覚症状が出ることがあります。高血圧や脳動脈瘤、心臓弁膜症などを認める事があり、定期的な検査が必要となります。
4. 治療法
以前は多発性嚢胞腎の治療はなく、高血圧に対する治療などしかできる事がありませんでした。しかし最近はトルバプタン(商品名:サムスカⓇ)という薬が出ており、治療薬として主流となってきております。最初に内服を開始する際には、非常に多量の尿が出るため入院をして開始する必要があります。また多発性嚢胞腎の患者さんでも①総腎容積(両方の腎臓の大きさ)が750cc以上および②年間5%以上の増加率であることが内服を開始する前に必要な条件です。ですから内服を開始する前に何回か受診をする事が必要になり、当院で最初に診断した場合には関連病院に紹介させて頂き、導入後にフォローをさせて頂きます。
5. 最後に
腎臓の慢性疾患は症状を伴わないことも多く見られます。そのため放置していて、いつの間にか取り返しのつかない状態になっていることもあります。多発性嚢胞腎の治療も徐々に進んできており、進行を遅らせる事ができる方がたくさんおられます。親族、特にご両親が多発性嚢胞腎の診断を受けられている場合にはぜひ一度検査することをお勧めします。