夜尿症
1. 夜尿症とは
「5歳以上の小児の就寝中の間欠的尿失禁で、1か月に1回以上の夜尿が3か月以上続くもの」と定義されています。男児に多いとされており、小学校入学する時点で約10人に1人、卒業する時点では約30-50人に1人の割合と言われています。
時間とともに軽快していくことが多いですが、医療的介入によって、夜尿の治療率を向上させることができることが分かっています。
夜尿症は、①一次性か二次性か ②単一症候性か非単一症候性かの分類があります。
①一次性・・・生来から持続する夜尿症
二次性・・・夜尿が6か月以上なかった後に再出現する夜尿症
②単一症候性・・・夜間のみの失禁
非単一症候性・・・昼間も尿失禁を伴うもの
2. 夜尿症の初期診療、診療アルゴリズム
下記に夜尿症のアルゴリズムを示します。この流れに沿って治療を進めていきます。
参考資料:小児科診療8 新しいガイドラインに基づいた最新の夜尿症診療2017 vol.80 No.8 p920より抜粋
3. アラーム療法について
アラーム療法は夜尿症児の2/3に有効な治療法で最も推奨度の高い、夜尿症治療の第一選択とされています。
行動療法に反応しない場合などにはアラーム療法が選択されます。効果が現れるまでに6-8週間かかり、効果があれば最低3か月続行します。14日連続夜尿がなくなるまで続けます。
アラーム療法を終了する前に、就寝前の飲水量を増やして、再発を防止することが推奨されています。
自宅でアラームが上手く使えなかったり、治療効果が発現するまで待てなかったりして、治療を中断してしまう親御さんもおられますが、治療を止めてしまう前にご相談下さい。
4. デスモプレシンについて
夜間多尿(>130%年齢推定膀胱容量=30+30×年齢ml)と正常膀胱容量(>70%年齢推定膀胱容量)の患者さんにはデスモプレシンが効果的とされています。
なぜなら就寝中の抗利尿ホルモン分泌が不十分なためにおこる夜間多尿が一因と考えられているためです。
尿浸透圧および尿比重を測定し、起床時尿で「尿浸透圧 800mOsm/L以下」「尿比重 1.022以下」が一つの目安です。アラーム療法が継続困難であったりした時に、変更したり、併用したりすることもあります。
また服薬のタイミングとしては寝る前と書かれている事が多いですが、効果発現までの時間を考慮して、就寝30分~1時間前までに内服してもらうことが進められます。
5. その他の治療
その他の治療としては抗コリン薬や三環系抗うつ薬があげられます。治療抵抗性の夜尿症には上記薬物の併用療法も考慮します。
6. 最後に
夜尿症は子供の自尊心を著しく傷つけ、また親御さんにとってはいじめなどの原因にならないかと心配の種になっている事が多く、長引けば長引くほどその傾向は強いです。
治療には患児の努力と親の協力が必要不可欠です。
しっかりとした治療計画を立て、病気に対する理解を深め、根気強く治療に取り組んでいきましょう。