過活動膀胱 OAB:over active bladder
1. 過活動膀胱とは
過活動膀胱とは『尿意切迫感』を伴う頻尿症状などを言います。
尿意切迫感とはトイレに行きたくなったら、我慢できない症状の事を言います。
40歳以上の方で7人に1人、約1000万人程度の方に症状があると言われています。
尿に関することは人には言わなくても、悩んでいる患者さんはたくさんおられますが、恥ずかしいなどの羞恥心が邪魔してしまい病院に受診できずにいる事が多いのが現実です。
2.主な検査
尿意切迫感などの症状を伴う疾患の鑑別をしていくことが必要になります。
一般医向けのアルゴリズムが簡潔であり、下記に示します。
参考資料:日本泌尿器科学会/日本排尿機能学会公認:過活動膀胱診療ガイドライン[第2版]
編集:日本排尿機能学会 過活動膀胱診療ガイドライン作成委員会 p12より
まず来院された際には必ず検尿、残尿測定(腹部超音波検査)を行います。
検尿は膀胱炎などの一時的な感染症の有無などを鑑別するため、腹部超音波は膀胱癌や膀胱結石の有無の鑑別のために行います。
また残尿測定は治療の前後には必須の検査と言えます。
頻尿の中には溢流性、つまり尿が出にくく、溢れ出すような形で尿が近い方がおられます。
残尿測定をせずに治療を開始すると、さらに尿を出にくくし、ひどい場合には尿閉、腎後性腎不全を引き起こす事があるため注意が必要です。
また治療開始後に残尿が増えてしまう事もあるため、定期的な残尿測定が必要です。
以上の検査で感染症や残尿過多などが否定できれば、内服の治療を開始していきます。
内服薬の種類に関しては下記をご参照ください。
また治療後同時に必ず自宅でしていただくのが、『排尿日誌』をつけていただくことです。
尿が近いと言っても、1回の尿量が多い場合も少ない場合もあり、それぞれ全く違う病態です。
つまり排尿日誌を確認しないと全く見当違いの治療をしている可能性もあるのです。
特に心因性多飲や糖尿病などの場合には尿量が増えるため、どれだけ過活動膀胱の治療をしても軽快しにくいため、注意が必要です。
『排尿日誌』
一般的に約150-200ml程度の尿がたまると尿意を感じ、300-400ml程度、多い人で600ml程度で尿を我慢できなくなると言われています。
尿の作られる量は状況によって様々ですが、1分間に約1ml程度の尿ができると言われています。
ですから3時間程度は排尿から排尿までの時間があります。
排尿日誌をつけることで、膀胱が過敏になっているのか、尿量が多過ぎるのかの鑑別が可能です。
3. 主な治療
過活動膀胱の治療は内服薬での治療が主体となります。
β作動薬
ミラベグロン(商品名:ベタニス)は現在発売されている唯一のβ作動薬です。抗コリン薬と比較すると口渇や便秘などの副作用が軽いと言われています。
一部の抗不整脈薬との併用は禁忌であり、また生殖可能年齢の方への使用は避けた方がよい(治験の段階でマウスの生殖器の縮小がみられたとの事ですが、現時点で人間での報告はないようです)などの制限はありますが、今現在、過活動膀胱治療薬の主流となっております。
抗コリン薬
以前から使用されているもので、現在でも多く使われております。種類も多く、内服も貼り薬もあります。
比較的、口渇や便秘などの副作用が出やすく、閉塞隅角緑内障などの合併症がある患者さんには使用できません。
効果と副作用の天秤にかけて使用する事が多く、患者さんそれぞれにあった内服を選択しております。
漢方薬
主な漢方薬としては牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)や猪苓湯(チョレイトウ)などがあります。
当院ではβ作動薬や抗コリン薬で効果が見られない患者さんに使用する事が多いですが、漢方薬の方が効果が断然高い方も一定数確実におられます。
副作用もさほど多く見られませんが、食前もしくは食間に内服するため、やや忘れがちになりやすいです。
その他の治療
内服治療などに反応しない場合には、電気刺激療法や外科的治療なども考慮する必要があります。
当院ではしていないため、希望があれば他院を紹介いたします。
4. 最後に
過活動膀胱の治療は鑑別が非常に大事です。
膀胱癌などの病気が症状としてサインを出してくれているのかもしれないからです。
また患者さんの中には治療を始めたら止められないと思われている方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。
止めたら元の状態に戻るだけであり、決して悪くなるわけではありません。
暖かくなると自律神経の不安定さも解消される事はよくあり、冬のみ内服をする方もおられます。外に出かける時だけ、頓服する方もおられます。
もしみなさんの中に悩んでいる方がいらっしゃれば、ぜひ当院でご相談ください。