尿管結石
1. 尿管結石とは
【尿管】とは腎臓で作られた尿を膀胱まで運ぶための管状の臓器のことです。
また尿管とよく混同してしまうのが【尿道】です。
尿道は膀胱から先の管状の臓器の事であり、位置している所が異なります。
腎臓でできた結石が尿管に落ちることで尿管結石となります。
尿管結石の症状として腰の痛みが最も多い症状です。
尿管結石の痛みの原因は、結石が詰まることで尿の流れを急激にせき止めることにあります。
尿が詰まると尿管や腎臓の周りの被膜が急激に膨張するために、激しい膨張痛が生じます。
ですので、典型的には下腹部~背中の痛みを訴えて来院される患者さんが多いです。
2. 尿管結石の治療
尿管結石の治療は基本的には『除痛』です。大抵の場合、座薬や飲み薬の鎮痛薬で痛みが落ち着きます。
なかなか痛みが落ち着かない場合もありますが、まれに腎梗塞など別の疾患の事もありますので、痛みが長引く場合には注意が必要です。
ある程度痛みが落ち着けば、自然に排石をするのを待つ場合が多いです。
一般的に5㎜以下の結石は排石可能、10mm以上は排石困難、5-9㎜ではグレーゾーンです。
9mm以下の結石は経過観察をして、10mm以上であれば破砕術などを行う事を検討します。
しかし尿管の大きさは人によって異なるので、1-2週間経過をみて移動がなければ、破砕術を検討します。
自然排石を待つ際には排石促進の内服をすることが多いです。
しかし個人的な意見ではありますが、十分な飲水を行うことが最も効果的と考えています。
痛みが落ち着いている状態であれば、結石の再発予防もかねて食事以外で1日2Lの飲水をすることを勧めています(痛みが強い状態であれば、飲水することで膨張痛が増すことがあるので、まずは鎮痛を図ります)。
3. 破砕術について
破砕術には主に体外衝撃波(ESWL)と経尿道的尿管結石摘出術(TUL)があります。
それぞれメリットとデメリットがあります。
体外衝撃波(ESWL) | 経尿道的尿管結石摘出術(TUL) | |
---|---|---|
麻酔 | 不要 | 腰椎麻酔もしくは全身麻酔 |
入院 | 施設によって異なる・外来でも可能 | 必要 |
破砕効果 | 硬さや位置による | ほとんどの場合で破砕は良好 |
残石 | 残ることが多い | 手術中に摘出可能 |
合併症 | 皮下出血、腎出血など | 尿管損傷、感染症など |
いずれも手術という枠になりますが、体外衝撃波は外来でも行うことができるため、最初に行う事が多いです。
ただ体外衝撃波で砕石効果が薄い場合やレントゲンで確認できない結石の場合にはTULを施行します。
詳しい方法などに関しては施設によって方針が若干異なるため、担当医師に確認をしてください。
4. 結石治療の緊急例
尿管結石にも緊急を要する場合があります。
特に発熱を伴う場合には急性腎盂腎炎を起こしている可能性が高く、早急に処置をする必要があります。
ステントと呼ばれる管で汚れた尿を流し出すようにします。
腎瘻と言って背中から腎臓に管を入れて一時的に膿を出す処置をする場合もあります。感染症を落ち着いた後にTULを施行します。
その他疼痛がどうしても収まらない場合などには緊急でESWLを施行するなどの処置を行います。
5. 結石の再発予防について
結石の再発予防において最も効果が高いのは、1日に2L以上の水分を摂取することです。
夏場や汗をかきやすい仕事されている方は結石が発生することが多いため、特に有効です。
また尿をアルカリ性に保つためにクエン酸製剤を内服すること、尿酸結石が疑わしい場合には尿酸生成抑制薬を内服することなどが勧められています。
そのほかには食事でカルシウムをしっかり取ること(リン酸やシュウ酸と腸管で結合すると吸収されないため、便に排泄されやすい)などが推奨されています。